悪ノ娘三部作

とりあえずは置いておきますね。


【オリジナル】
悪ノ娘
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2916956

悪ノ召使
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3133304

リグレットメッセージ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3440324


【(個人的に気に入った解釈の)PV】
悪ノ娘
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3530943

悪ノ召使
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3812000
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3568115

リグレットメッセージ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3459828



さて、ここからかなり野暮な話が始まります。
本来こんな風に野暮に語るものじゃないと思うんですが、召使PV(上記sm3812000)の解釈が「私の解釈はまさにそれ!」だったので、勇んで足を踏み出してみようと思います。

悪ノ娘を好きな人ほど読まない方がいいかと思います。それでも読むという方は、野暮なのを了承した上で以下をご覧ください。









まず、全部観たのを踏まえた上での話ですが、おかしいところがいくつか散見されます。


まず、リンが国のTOPとなった点。

オリジナル<召使>での背景メッセージで少し触れられるのですが、リンが王女になった時点での王女にならなければならない理由として、「王は3年程寝たきりらしい」「女王と呼べるのはただ一人(なので、リンは王女のまま)らしい」というのが示唆されます。

とりあえず王と女王が執務を取れないと仮定して、何故双子の♀をわざわざ王位に迎えたのか。しかも王位継承権としては第一位である筈の♂は、召使とされている。まずここが基本的にはおかしい。

さらに、召使となったこと、オリジナル<召使>を見る限り王女よりは世知に長けていることから考えて、レンは一度(たぶん家臣の下に)養子に出され、廃嫡されたのでしょう。

そうなった理由はおそらく、王女リン=傀儡とするため。
リンはシンボルに祀り上げられただけだったのでしょう。


どれだけ悪逆でそれが国のトップであろうが、小娘一人の嫉妬で隣国を攻めたり、重税をかけたりが出来る訳は無いんです。それらは全て尻尾切りです。<政治>に責任があるのではなく、<王女の我侭>こそが原因だと、国民に思わせておくためのものです。


ただ、リンも一つ重い罪を犯しました。ミクの暗殺です。これが引き金となり、緑の国との戦争が起き、更には市民の蜂起、国の崩壊、レンという半身の喪失を起こしました。

ただ、これも<娘>で語られることを鵜呑みにして良いものか。


ミクを殺した後、リンは「海の向こうの青い人」になんのアクションも起こしていません。ただ何事も無くいつもの様にレンと王宮内で過ごすだけです。おやつを食べながら。

リンが本当に恋をし、そこからミク暗殺に手を染めたとは思えません。
そもそも、リンはどこで見初めてor知り合い、恋をしたというのでしょう?


暗殺自体はリンの願いなのでしょう。<召使>で語られるように。でもそこに「海の向こうの青い人」の存在が見えないんです。ついでに緑の国自体に戦争を仕掛ける意図がリンにあったとも思えません。

で、上記のPV<召使>(sm3812000)の解釈が私が考えていたものそのままで。リンはレンを失いたくなかっただけではないのか、というものです。


そして、ミク暗殺の動機を嫉妬から出たこととし、その結果を暗殺で終わらせず戦争侵略としたのは、やはり、リンを傀儡として操っているもの達──恐らくはリンの国の大臣達──でしょう。

だからリンは、場合によっては、緑の国に戦争を仕掛けたことすら知らなかったんじゃないか。そう思います。


次に、おかしい訳ではないのですが、オリジナル<召使>で、青と赤がリンレンの入れ替わりを見抜いていたんじゃないだろうかと受け取っている人が居るようなのですが…問題のシーン背景はこうです。

赤「仮面、似合ってないわよ。色男さん」
青「…」
リン「ごめんね、レン」

これをどう受け取るか。個人的には

青がミクの仇を取る為に、国としてではなく一個人として仮面を着けて市民蜂起に混じっている。それを判っていて冷やかす赤。その横を泣きながら駆け抜けていくリン。

みたいなシーンが浮かんでるんですが、確かに赤がレンに向かって言ったとみえなくも無い。その場合、赤も青も見抜いているということでしょう。というか、私も身代わりはバレては居ると思うのです。単に、赤のセリフは青に向けられたものとして読んだだけで。

けれど、その場合、何故間違いを指摘せず、結局レンを処刑してしまうのか。


実はココ、解釈はどうでもいいんです。理由は簡単。


男だろうが女だろうが、実際に邪悪だろうがそうでなかろうが、そんなことはどうでもいいからです。

この市民蜂起の成功とは、
『我ら国民の苦痛の源である(とされている)王女(と呼ばれる者)を殺して現王政の廃止を』
です。

<悪>の<象徴>たる<王女>をギロチンにかけること、それが全てです。

要は政治的判断が働いた。それだけです。リンであろうがレンであろうが、果ては他の誰かであろうが、<王女>として死んでくれるならそれで良かった訳です。


レンは…たぶんわかっていたのでしょう。「双子だからばれないさ」。詭弁です。ばれるに決まっている。でもリンを逃がすためにそう嘘を付いた。


運命に翻弄され、傀儡に仕立て上げられ、国民の憎しみを一身に引き受けさせられたリン。レンはきっとそれら全てをわかっていたからこそ、自分の心を殺し、体を殺したのでしょう。

そうなっていたのは、半身たる自分だったかもしれないのだから。

そう思えて為りません。




ここまで考えてより悲しくなったのですが、更にもう少し──


後日談として、<リグレット>PVのエンディングのようになってればいいなとは思うのですが、ここで第一作であるオリジナル<悪ノ娘>の話をします。


<召使>はレンの当時の心の動きを追った曲だと言えるでしょう。
<リグレット>は全て終わった後のリンの後悔を謳った曲でしょう。
では<娘>は・・・?


「むかしむかしあるところに」で始まるこの歌は、リン本人でもレン本人でもなく、人口に膾炙した所謂<お話>を謳ったものに見えます。その背後には何も見えません。ただの<昔話>に見えます。


ですが、実際に歌っているのは誰ですか?私達は誰の歌声でこの歌を聞いたでしょう?


勝者である市民側に残っている歌ならば、赤が歌ってもいいですし、何より最後の

後の人々はこう語る 彼女は正に悪ノ娘

という歌詞は違和感を覚えます。

この歌を市民側の歌としてみた場合、この歌詞の「後の人々」とは自分達市民のことです。「我々はこう語る」のなら、歌詞内でそう言えばいいところを、わざわざ「市民が王女のことを悪ノ娘だと言っていた」と、勝者たる市民を<外>から眺めている歌に聞こえませんか?

そもそも自分達を

烏合の彼らを率いるは

と歌うでしょうか?


蛇足ですが、これが例えば青の方に伝わる歌だとしても、青が歌うべきでしょうし、その場合それはもっと復習譚なり英雄譚なりになると思われます。



この歌はきっと後の──<リグレット>よりも後の──<彼女>が自分の犯した『とされている』悪行を、その後悔と共に、敢えて人口に膾炙されているままに、認め、受け止め、伝え残そうとしたのでは無いかと、そう考えます。

<彼女>自身が歌い、広めようとしている歌なのではないかと。

自分の罪を受け入れるためにも。罪を犯した自分を助けてくれた半身のためにも。


本当に、悲しい歌だと思います。