3人PTにしちゃったよ言い訳小説

 アイゼン地方ゼンダ竹林──邪花フロワロに覆われる前は、世界的に有名なほど質のいい筍を収穫出来る唯一の竹林であった──に、一人の男の声が響き渡った。


「っだぁぁぁぁっ!!つっかれたあああ」
 その男は浴びた体液も拭わず、たった今死体となった巨大なカマキリの横に同じようにぶっ倒れた。少し離れた所ではヒーラーの少女が杖に凭れ掛かりながら座り込んでいる。
「タ、タフだったねー…」
 声を出すことすら億劫そうにしながら、少女は鞄を漁りタオルをふたつ取り出した。ひとつを男の方に投げて渡す。
「サンキュ。…くっそ割に合わない仕事だぜ。
ドラゴン退治のついでに筍取って帰るだけで済むと思ったのによー。」


 アイゼンの美食家からの依頼でゼンダ竹林の筍を持ち帰ることが今回彼らが請けた依頼だった。ドラゴンの殲滅が彼らの主な任務ではあったが、同時に一般のハントマンの請け負うクエストもこなすことが良くあった。
 『どんな小さなクエストでも、依頼してる人にすれば世界の命運と変わらないぐらい大事なことだもの。』
 ギルドマスターである少女がそう言う以上、男はそれを手伝うことに異論は無かった。むしろ世界の命運を賭けた戦いの方こそが彼女に似合っていないのだと思っていた。



「ドラゴンじゃないよね…コレ。」
「キングより強かった気がするがな。ってもキングは手負いだったけど。」
「うん、大統領のおかげだもんね。まだまだだなぁ私たち。」
 そう彼らはギルド『たんぽぽ』。
 たった二人で構成されたギルドでありながら、帝竜キングを打ち滅ぼし、占領されていたカザンを解放した救国の英雄である。
 そんな彼らは今ちょっとした問題を抱えていた。



「なぁ、やっぱりもう一人ぐらいは戦力が必要なんじゃないか?」
 依頼の完了報告後、宿を取り食事を済ませたところで、唯一のギルドメンバーであるソードファターのブーンが言った。それは最近毎日のように上がる話題だった。
「でも…やっぱり今更巻き込むのは…。」
 ギルドマスターであるモルの答えもいつも通りだった。


 図らずも世界の命運を背負うことになったこのギルドに入るということは、同じ重さを背負うということだ。モルはそれを気にしていた。それはブーンにだってわかってはいる。だが今回はブーンも譲る気は無かった。


「今日のカマキリでわかっただろう?俺たちは絶対的に戦力不足だ。これからもっと強いドラゴンや怪物が出てきたらどうする?俺たちが負けた後、違う誰かにこの重荷を背負わせるぐらいなら、今その誰かに入って貰うべきなんじゃないのか?」
「そうだけど…少なくともあなたは死なせないわ。わたしの命に代えても。」
「ッ!そんなだからもう一人入れようって言うんだ!」
 突然の大声に驚くモル。しかも何故怒鳴られたかわかっていない顔だった。
「な、なによ、今までだって一度も死なずにやってこれたじゃない。」
「あぁ、俺は、な。誰かさんが自分のケガを隠してでも回復魔法を掛けてくれてりゃな。」
「!!…気付いてたの…。でもそうしないとあなたが倒れ…」
「お前が倒れたら同じだろうが!」
「同じじゃないでしょ!ソードファイターのあなたならもっと戦力の充実したパーティが組めるじゃない!」
「そういうこといってんじゃないんだよ!」
「じゃあ何よ!」
「俺はお前と一緒に戦いたいって言ってるんだよ!」
 ブーンの顔が赤い。モルの顔も徐々に赤くなっていた。二人とも黙って俯いている。
「ごめん…じゃなくて、あ、ありがと…。」
「お、おう。」
 まだ赤い。
「そ、それだけじゃねーぞ。戦闘に時間が掛かりすぎて離れたところに居た筈のドラゴンに気付かれることもしょっちゅうだし。もしかしたら時間制限がある討伐だってあるかも知れないしな。」
 照れを隠すように捲し立てる。
「時間制限なんてあるかしら。」
「わかんねーぞ?川に住むドラゴンと戦う時に滝壺に逃げられる前に倒さなきゃならないとか。」
「空に住むドラゴンを倒すためにもっと高い所から落ちながら戦うとか?」
「いや、さすがにそりゃないだろー。」
「だよねー。」
 いつものように馬鹿話で笑い合う。
「だから、さ。」
「うん。入って貰おう。ちゃんと事情も説明してさ。」
「あぁ。じゃあ明日はカザンってことで!」
「ことで!」


 その後、彼らが二体目となる帝竜デッドブラックを倒した時、そこには新たにアクスファイターであるルシェの少女の姿があった。
 とはいえ、その少女が加わるときにまた一悶着あったのだが…。


無意味に続いたり。


実際3人プレイしてみるとヒーラーの負担が増えました。
戦闘時間はちゃんと短くなりましたけど。