少し前に話題になったアレを読んでみた

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」まとめサイト


そりゃ話題にもなる。
今まで読んでなかった己の不明を後悔せずにはいられないぐらい。


一応以下はネタバレ注意。
詳しくは書いてないけど、読む楽しみを多少は奪うと思う。
まずは何より一読をオススメ。







商取引における舌戦で、民衆の自由民権への目覚めで、統治者達の新たな治世への啓蒙で、etcetc…肌を粟立たせるこれは一体なんだ?


CRPGなどにおける、勇者=絶対善、魔王乃至モンスター=絶対悪、という図式への疑問は、以前からすでにあった。
一部ではフリーゲームで表現されたり、ファンタジー漫画でもそれに取組んだものを見た覚えがある。
昨今のファンタジー世界では特に目新しいものでもないだろう。


が、その具材を、『狼と香辛料』を彷彿とさせるような商取引を国家規模――いや、世界規模での経済戦争――という皿に載せ、料理しきるこの手腕・筆力には舌を巻かざるを得ない。


開門都市はイスラエルに模され、技術革新も、伝染病の克服も、奴隷制からの解放も、宗教や王権の変遷も、全ては現実世界にあった歴史で事実だけれど、その瞬間瞬間を疑似体験させ感動を与えてくれる。


例えば、ボクはメイド姉の演説で涙が出た。
脚本として感動的なシーンではあるが、その演出で涙が出たんじゃない。
現実にあったであろう、自由主義の誕生の瞬間を見た思いがしたからだ。
それに感動した。
魔王の弟子達への教育が実に成っていく様にも胸が熱くなる。


こんなファンタジーは寡聞にして出会ったことが無い。



スレへの投下という形であった以上、所謂『小説』ではなく、ほぼ対話劇になってはいるが、情景描写などを少し肉付けすれば、その辺のライトノベルじゃ太刀打ちできない正統派ファンタジーになるのではないだろうか。




あぁだめだ。言い尽くせない。
是非読んでみて下さい。この物語を。
特に出版社の編集の人。この才能を野に埋もれさせるのは惜しすぎます。
よくあるようなスレをそのまま本にする形ではなく、小説という形に仕上がるように。
狼と香辛料のような前例がある以上、漫画化もアニメ化もされておかしくない一品だと思います。


大きなお世話でしょうがボクはこの物語になら対価を払って惜しくない。
純粋にそう思います。
それぐらいよかった。


まぁ下敷きとなってるものがある以上簡単に商業化とはいかないでしょうが。
断っておきますが、その「下敷き」をパクったとか真似たとかそういうものではないです。
それこそ<その先>を描きたかったんだろうなと思います。


読みきった上で元ネタを知らない人はコチラを。


個人的にはコレを下敷きにしていなくても何の不足も無いと思います。
独自のファンタジーとして余裕で構築し得る。


過疎サイトの上に今更ではありますが、弊サイトは『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』を全力で応援します!
多くの人に是非読んで欲しいです。




※追記
はてな界隈でこの作品について触れられてるエントリにトラバ。
もしかしたら増えていくかも。


泣けるほどおもしろすぎるネット小説を読んだので熱烈推薦するよ。 - Something Orange
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20100429/p4