ぼくのマリー

10年以上、「読まなきゃ読まなきゃ」と思っていたんですが、今日古本屋で全巻セットを発見したのでついに購入。
そして即読破。
普通に面白いし、ハッピーエンドだし、恋愛面においてもかなりしっかり描かれているし、作品自体はかなりの良作です。


が。
以下ネタバレ。







人間ENDなのかよおおおおOTZ
と、個人的嗜好からは至極残念な結果に。
いや、ハッピーエンド的には何にも問題はないんですが。


初期設定がもう罪深い訳ですよ。
実在の人物の模倣として、道具として、お人形さんとして作られて、そしてそれなのに、自由意思が与えられてしまっている――
これって実は、アンドロイドとはいえ、人間を奴隷のように扱うのと変わらない状況なんですよね。
「お前はアンドロイド(奴隷)だから、自由意思があろうとも、製作者(主人)に従え」っていう。


自由意思の無い、完全に道具として生まれたロボットであったとしても、人型をしていれば同情を誘うのに、生まれたその瞬間から自我がある。
フランケンシュタインの怪物であれば「なぜ私に自由意思など与えたのだ」と大いに苦悩すること間違い無しなシチュエーションで始まるわけですよ。


しかもご丁寧にロボット三原則のようなこともやるし、アンドロイドとして与えられた役割と自分自身の意思の狭間での葛藤が全編通じて描かれていて。
愛する者と共に年老いて行けない事や、もし好きな相手が出来ても子供は産めないであろうことなども、作中にかなり散りばめられていて。


これらの諸々にどのような答えを見せてくれるんだろう、と期待して期待して読み進めていったら、「奇跡で人間になれたのでオールクリア!」は流石に残念です。


ただ、出産のくだりもエンディングで触れられるわけで、人間になってからあえてあのような台詞を持ち出したのは、もしかしたら作者も望んだ展開ではなかったのかもなぁと思います。
真理にアンドロイドとばれるくだりでも――あれだけ付き合いが深くなっていたにも係わらず――、真理は『ロボットだから恋愛感情は持って居ない(はずだ)』という台詞を言っていますし、その辺りの<自由意思を持った無機物>をもっと描き込んで行きたかったのかも知れません。


ちなみにボクはあのシーンのせいで真理は嫌いです。
個人的には「機械は意思や感情を持たない」と決め付けられる感性自体がわかりません。
魂の存在を信じている訳ではなく(むしろ魂とかには否定的)、人間――というか地球に在る生物だって単に電気刺激で動く有機物なだけだと思っているので、無機物に意思が生まれても何も不思議だとは思いません。
逆に魂なんかを信じている人は無機物に魂が宿るのが認められないのかも知れませんね。


閑話休題
ブコメとしては良作なんですが、個人的に求めてるテーマからは肩透かしを喰らった感じでした。
作者さんが「これ描きたかったんじゃないかなぁ」というところが散見されるだけに、とても残念です。
まぁボクの思い込みでしかないんですが。