富野由悠季の講演とRPGにおける移動論

一日遅れですが、ゲーム情報に興味の無いガンダマーやトミノスキーの方も居られると思うのでリンク。


4gamers
CEDEC2009「ガンダムの父」富野 由悠季氏が若いクリエイター達を挑発する基調講演,「慣れたら死ぬぞ」の中身とは?



で、これは紹介だけしておいて、同じ4gamers内の別の記事、
CEDEC2009 今のゲーム業界にアンチテーゼを投げかけた「Demon's Souls」のゲームデザイン
から、

梶井氏は,近年ゲームのハードウェアの性能が飛躍的に向上し表現力が増す一方,開発費が高騰するという,よく言われるゲーム業界の問題点を改めて説明しながら,「開発リスクが高まったことで,マーケティング主導の制作スタイルを余儀なくされる風潮があります」と指摘。そして「その結果として,制作側が“何を作りたいか”が重視されなくなってしまっているのではないか」と警鐘を鳴らす。

と、ボクが常々言ってる<クリエイターの本気>とか、今のGジェネはやっぱりマーケティング主導だなぁと思ったりとかしつつ、
本論は以下の記事から。


あの“ゲームの神様”遠藤雅伸氏がMMORPGに言いたい放題。「ドルアーガの塔」からケータイゲームまで,存分にどうぞ



遠藤氏は、「(MMOにおいて)移動が面倒くさい」と言っておられるがボクは少し違う意見があって、
「めんどうくさい」んじゃなくて「つまらない」んじゃないかと思っている。


かつてイースハイドライドといった初期のRPGでは、移動することが世界を広げることであり、同時に戦闘をすることでもあった。
そこまで遡らなくても、近年のMMORPGなどにおけるフィールドマップは、
「(一応は)その世界を見て回る」という目的の元にデザインされているのではないのか。


また、スーパーマリオロックマンに代表される横スクロールアクションも、移動こそが肝要ではなかったか。


ところがファイヤーエンブレムなどに見られるステージクリア型のRPGでは、
フィールドマップが設定的には存在するにも係わらず、使用することをやめてしまっている。
これはフィールドマップを用意しているFFTやTOでもそうだ。
戦闘の起こる場所が決まっており、フィールドマップは飽くまで世界観作り、雰囲気作りにおける添え物でしかない。


考えてみてほしい。
例えば9が出た今であっても、未だに根強い人気を誇るドラクエ3が、
フィールドマップが無く、各町、各ダンジョンだけをクリアしていくものだったらここまでの人気があったろうか。


初めて海に出る感動も何も無い。
ただただ広い行動範囲を与えられ、どこから手をつけていいかわからない不安感と、
それに反する未知の世界への興味と期待感。


RPGにおける移動はそれだけの価値を持っていたのではなかったか。


だが、ドラクエのフィールドマップが移動の意味を奪ったという側面もある。
正確には、ランダムエンカウント制が、か。
アクション性が無く、ランダムエンカウントな以上、プレイング的な意味でそこの移動の意味は薄い。
目的地まで十字キーを押し続けるだけである。
エンカウントしたら、「うざいなぁ」という軽いストレスと共に戦闘をするだけ。
これをRPGのデフォルトのようにしてしまったドラクエには多少なりとも罪があるように思う。


一方、ロマサガ等におけるシンボルエンカウントは、エンカウント制なのに、移動に意味を付加していて素晴らしい。
「避ける」ことも「当たりに行く」こともでき、そこにゲーム性というものが発生している。
こちらこそがデフォルトになってほしかったのだが。


そして、フィールド移動を廃したRPGの究極にFFX-2がある。
ほとんどステージクリア型になってしまっているのだが、そのステージ内では段差などジャンプモーションの入るところもあり、
退屈なフィールド移動を強要されるよりはストレスを感じなかった。


で、実際ユーザーの多くが移動を不要なモノと思っているのか、もしくは退屈なフィールド移動を是としているのかといえば、
そんなことはないのではないかと思う。


イース等の昔に返ったようなアクションRPGの流行―(MOではあるが)モンスターハンター等―や、
MMOにおいても、移動に趣向を凝らしたものが増えてきている。


ただ、後者は「楽に目的地に着ける」という移動の省略に向かうような動きであり、
現行の多くのMMOの「効率のいい狩場に行って敵を狩るだけ」という根本的なシステムをどうにかしないと
結局行き詰るしかないかもしれない。


前者の代表に上げたモンスターハンターも、
各エリアには移動の意義がある(採取だったり、雑魚敵の撃破だったり、ボスの巡回ルートだったり)が、
世界地図のようなフィールドマップ部分はオミットしてしまっていることを指摘はしておく。


その世界を移動する―言ってしまえば探検だったり、ダッシュで走り回ったり、景色を眺めたり、無意味にジャンプしてみたり、
崖を登ってみたり、高いところから飛び降りてみたり、洞窟に入ってみたり、泳いで見たり。
そんな中で、モンスターとの戦闘があったり、たからものを見付けたりするのが、とても楽しいと思うのだ。


戦闘が目的ではなく、事象のひとつでしかないような、移動こそが主目的であり操作してるだけで楽しいゲーム。
そんなゲームを望んで止まない。